古代から愛された鮎という魚
「鮎って、昔の人にとってどんな存在だったんだろう?」上長瀬やな 和亭で根尾川の鮎と向き合っていると、そんな歴史の中の川魚文化に思いをはせることがよくあります。
鮎は、実はとても歴史の古い魚です。日本では縄文時代の貝塚から鮎の骨が見つかっていて、人々がかなり昔から川で魚を獲り、食べていたことが分かっています。保存方法は今のように冷蔵庫があるわけではありませんから、干したり、塩漬けにしたりして大事に食べられてきました。
鮎は「年魚」とも書きます。年魚とは、その名の通り「一年で一生を終える魚」という意味で、春に川をさかのぼり、夏に育ち、秋に産卵して命を終えるというサイクルを持ちます。この短くもはっきりした一生が、「季節を知らせる魚」として昔の人の感覚に強く刻まれていたのだろうと思います。
日本の古い和歌や物語の中にも、鮎はたびたび登場します。川辺で鮎を焼く香り、せせらぎの音とともに語られる夏の情景。きっと昔の人たちも、川辺で煙を上げる火を囲みながら、「今年の鮎はよく太っている」と話していたのではないでしょうか。
また、鮎という漢字には「魚」に「占」と書く字もあります。これは、古くから鮎が吉兆を占う魚として神事にも用いられてきたことに由来するとされています。『日本書紀』には、神功皇后が戦の行方を占うために鮎を釣ったという伝説が記されており、鮎が単なる食べ物ではなく、信仰や文化とも深くつながっていたことがうかがえます。
上長瀬やな 和亭でも、お客様から「子どものころ、川で魚を獲って、その場で焼いて食べた」という思い出話をよく伺います。あるご年配のお客様が、「鮎を食べるとね、不思議と夏休みの匂いがするんですよ」と笑っておられました。その言葉を聞いたとき、鮎は単なる食べ物以上に、「季節の記憶」と深く結びついているのだなと感じました。
川魚文化とやな漁の歴史
鮎は、昔から「川魚の代表」として親しまれてきました。その背景には、日本各地で川とともに暮らしてきた人々の生活があります。稲作が広まる前から、川の恵みは貴重なたんぱく源であり、人々の生活を支える重要な食料でした。
鮎漁にもさまざまな方法があります。代表的なものとして、友釣り(生きた鮎をオトリにして、ほかの鮎を誘う釣り方)、網漁(投網や刺し網などを使う方法)、やな漁(川に仕掛けを組み、流れてくる鮎を受け止める方法)などがあります。とくにやな漁は、川の流れを読み、木や竹を組んで大きな仕掛けをつくる、いわば「川の建築」のような伝統漁法です。
やな漁の歴史はとても古く、1000年以上前の文献にも登場するといわれています。当時は、鮎が税のように納められたり、贈り物として用いられたりすることもあったそうです。きれいな川の鮎は「おもてなしの品」として重宝され、川の恵みを通じて人と人のつながりも生まれていました。
岐阜県は、古くから「鮎の国」として知られてきた土地でもあります。清流・長良川の「鵜飼」は1300年以上の歴史を誇り、宮内庁式部職の鵜匠が伝統を受け継いでいることでも有名です。長良川だけでなく、根尾川や揖斐川など岐阜の各河川には、それぞれの流域で育まれた鮎漁の文化が息づいており、地域ごとに漁法やしきたり、鮎の味わいに違いがあるのも面白いところです。
根尾川沿いでも、昔からやな漁が行われてきました。揖斐川町の人々にとって、夏のやな場は「季節の風物詩」であり、家族や仲間と集う場所です。上長瀬やな 和亭のある場所も、そうした長い歴史の延長線上にあります。
あるとき、地元の方が「若いころは、やなに上がった鮎を見て、夏が来たと感じたもんだ」と話してくださいました。今はお店としてお客様を迎える場になりましたが、「やなのある風景を見たら夏を感じる」という感覚は、昔も今も変わらないのだと思います。
昔の人が大切にした「鮎の旬」と食べ方
歴史の中で、鮎はただ「獲れたら食べる魚」ではなく、「旬を楽しむ魚」として愛されてきました。鮎の旬は、一般的には初夏から盛夏にかけてと言われますが、昔の人たちはもっと感覚的に、「川の匂い」とともに旬を感じていたのではないでしょうか。
若鮎と呼ばれる初夏の鮎は、身が繊細で香りがやさしく、「若さ」を味わうような上品さがあります。盛夏になって身が太ってくると、香りや旨みがぐっと増し、「いよいよ夏本番」という力強さが出てきます。秋に近づくと、卵を持ち始めたメス鮎や、脂の乗った個体も増え、コクのある味わいが楽しめます。
昔の人は、こうした変化を経験的に知っていて、それぞれの時期に合った食べ方を楽しんでいました。たとえば、若鮎は塩焼きや天ぷらにして香りと柔らかさを楽しみ、盛夏の鮎はしっかり塩焼きで焼き上げて骨太な旨みを味わい、秋の鮎は甘露煮や煮浸しにして保存食としても活用する、といった具合です。
こうした「旬に合わせた食べ分け」の知恵は、冷蔵・冷凍の技術がなかった時代だからこそ磨かれたものです。鮮度の良い若鮎はその場で焼いて香りを楽しみ、秋の成熟した鮎は甘露煮にして冬の貴重なたんぱく源にする。限られた季節の恵みを無駄にしない工夫が、そのまま「鮎料理の多彩さ」へとつながっていったのだと思います。
上長瀬やな 和亭でも、鮎の状態を見ながら、「今の根尾川なら、こういう楽しみ方がおすすめです」とお客様にお伝えしています。ある年、初めてご来店いただいたお客様が、「若鮎の時期と、真夏の鮎ってそんなに違うんですか?」と興味津々で質問されました。その年は、6月と8月に2度足を運んでくださり、「同じ鮎なのに、本当に別物みたい」と驚かれていました。
昔の人が季節ごとの鮎を大切に味わっていたように、私たちも「今年の根尾川の鮎は、今こんな表情をしていますよ」とお伝えしながら、一番おいしい時期と食べ方をご提案したいと思っています。
川とともにあった暮らしと、現代の私たち
昔の日本では、川は「生活の道」でした。水を汲み、洗い物をし、ときには川で遊び、そして魚を獲る。鮎はそうした日常の中で、ごく自然に「季節のごちそう」として人々の食卓に上っていたはずです。
現代の暮らしでは、川と触れ合う機会は少なくなりました。それでも、鮎の塩焼きの香りをかぐと、「ああ、夏だな」と感じる方は多いのではないでしょうか。この感覚は、きっと何世代にもわたって受け継がれてきた「川と魚の記憶」のようなものだと思います。
揖斐川町や根尾川周辺では、今も川とともに暮らす感覚が息づいています。川沿いの田んぼや畑、山の恵み、そしてやな場や釣りを楽しむ人たちの姿。そうした風景の中で、鮎は「特別なごちそう」であると同時に、「川が元気でいてくれている証」として見られています。
近年では、全国的に川魚離れが進んでいるとも言われますが、裏を返せば、清流で育った天然に近い鮎を味わえる場所そのものが貴重になってきているとも言えます。根尾川のように水質が保たれ、漁協や地元の方々が資源を守り続けている川があるからこそ、「本物の鮎の味」を次の世代にも伝えていくことができるのだと感じています。
上長瀬やな 和亭の店内からは、そんな根尾川の風景を眺めることができます。夏の日差しにきらめく水面、遠くに聞こえるせせらぎ、時折吹き抜ける川風。お客様の中には、「ここに来ると、昔の日本の夏休みにタイムスリップしたみたい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
あるご家族は、「子どもたちに、川と魚の記憶を残してあげたくて」と話しながらご来店くださいました。鮎を焼く香りをかぎながら、川を眺めているお子さんの表情は、とても真剣で、どこか懐かしいような、不思議な時間が流れていました。「昔の人と鮎」の物語は、こうして今も途切れることなく続いているのだと感じます。
歴史に思いをはせながら味わう「根尾川の鮎」
鮎は、長い歴史の中で、日本人の暮らしや文化と深く結びついてきた魚です。季節を告げる魚として、祝いの席のごちそうとして、川とともに生きる地域の象徴として、大切にされてきました。
上長瀬やな 和亭でお出ししている鮎も、その延長線上にあります。根尾川のきれいな水で育った鮎を、昔ながらのやな漁や炭火焼きという形で受け継ぎながら、現代のスタイルに合わせた冷房の効いた店内で、ゆっくりと味わっていただけるようにしています。
私たちが大切にしているのは、川の状態や鮎のコンディションを見極めること、串打ちや塩加減・火加減といった職人の技を丁寧につなぐこと、初めて鮎を食べる方にも歴史に触れるような体験をしていただくことです。
縄文の昔から、人は川辺に集い、魚を焼き、その香りとともに季節を感じてきました。根尾川のほとりにある上長瀬やな 和亭で鮎を味わう時間は、そうした悠久の営みの、ほんの一場面にすぎません。けれど、目の前の川の流れや炭火の香りの中に、千年以上続いてきた「人と鮎の物語」の気配を感じていただけたなら、それはとても嬉しいことです。
あるお客様が、「ここで鮎を食べると、知らないうちに昔話の中に入り込んだみたいな気持ちになります」と言ってくださいました。根尾川の流れややなの風景が、言葉にはしなくても「昔の人と鮎」の物語を語りかけてくれているのかもしれません。
もし、鮎の塩焼きを前にしたとき、「今までどんな人たちが、この魚を楽しんできたのかな」と少し思いを巡らせていただけたら、それはきっと、とても贅沢な時間になると思います。歴史に登場する川魚文化の続きを、ぜひ根尾川のほとりで、五感で味わってみてください。

🍃**上長瀬やな 和亭(なごみてい)**🍃
岐阜・根尾川の自然に囲まれた「やな」で、旬の鮎を炭火で。
魚屋一筋30年の目利きが選ぶ、極上の鮎料理をぜひご堪能ください。
📍岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲長瀬720
📞 ご予約・お問い合わせ:0585-55-2630
🕒 営業時間: 11:00~ 17:00 ラストオーダー16:30
🚗 大型駐車場完備 / PayPay対応
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