鮎の串打ちに込められた職人技

なぜ鮎に串を打つのか?見た目以上に大事な理由

「鮎の串打ちって、ただ刺しているだけじゃないんですね」と、よくお客様に驚かれます。上長瀬やな 和亭では、根尾川の鮎の魅力を最大限に引き出すために、この「串打ち」に職人の技と想いを込めています。

鮎を炭火でおいしく焼き上げるために、串打ちは欠かせない下ごしらえです。「ただ串に刺して焼けばいい」と思われがちですが、実はこの工程で、焼き上がりの味・食感・見た目が大きく変わってしまいます。

鮎は身がやわらかく、骨も細い魚です。そのため、串の打ち方が少しでもゆがんでいると、焼いている途中で身がねじれたり、腹が裂けたり、頭が落ちてしまったりします。よく見かける「ピンと反り返った鮎の塩焼き」は、単に見た目を整えるためだけでなく、火がまんべんなく当たるようにすること、身の中に余分な水分を残さずふっくら焼き上げること、焼いている途中に形が崩れないようにすること、といった理由があるのです。

鮎の塩焼きは、素材の良さがそのまま表に出る料理です。上長瀬やな 和亭では、根尾川で育った鮎の香りと味を一番良い状態で味わっていただくために、「串をどう打つか」から真剣に向き合っています。

ある日、常連のお客様が、ご家族を連れて久しぶりに来店されました。「ここの鮎は、頭から尻尾まで形がきれいだね」とおっしゃり、さらに「骨も抜きやすいから、子どもにも食べさせやすい」と喜んでくださいました。そのとき私たちは、「きちんと串を打つことは、お客様の食べやすさにも繋がっている」とあらためて実感したのを覚えています。

串打ちの基本の流れと、職人が見ているポイント

鮎の串打ちは、単なる作業ではなく「一本ずつと向き合う時間」です。ここでは、上長瀬やな 和亭で大切にしている基本の流れと、職人が意識しているポイントを、少しだけお話しします。

まず、鮎の状態を確認します。同じ根尾川の鮎でも、大きさ、太り具合、その日の水温や時期による身の締まり方が少しずつ違います。「今日は少し細身の若鮎が多いな」「この鮎は立派に育っているから、火からの距離を少し考えよう」など、串を打つ前から、その日の鮎と対話するような感覚があります。

一般的な串打ちの流れは、次のようになります。

  1. 鮎の表面の水気を軽く拭き取る
  2. 串を打つ向きを決める
  3. 口の中から串を入れ、背骨に沿わせるイメージで通す
  4. 尾のつけ根までしっかりと串を通す
  5. 焼いたときに泳いでいるように見えるよう、体に弧をつける

このとき大切なのが、「背骨を折らないようにしながら、しっかり支えとして使う」という感覚です。強く押しすぎると骨が折れ、弱すぎると焼いている途中で身がぐらつきます。さらに、串を通す角度が少し違うだけで、焼き台の上でのバランスが変わり、火の当たり方も変わってしまいます。

上長瀬やな 和亭では、鮎を「まるで川を泳いでいるような姿」で焼き上げることを大切にしています。これは見た目の美しさだけでなく、皮に余計な力がかからず、焼いたときに自然な張りが出るからです。ふっくらと反り返るような形にすることで、炭火の熱が均一に回りやすくなり、身の中までムラなく火が通ります。

串打ちを担当するスタッフ同士でも、「このサイズなら、もう少し深めに刺した方がいい」「今日は身が柔らかいから、ここから刺す角度を変えよう」など、日々細かい工夫を重ねています。ある新人スタッフが初めて本格的に串打ちを任された日、ベテランスタッフから「串を打つときは、焼き上がりの姿を想像しながらね」と声をかけられていました。その一言には、「今だけでなく、その先のお客様の一口目まで想像する」という、上長瀬やな 和亭らしい考え方が詰まっていると感じます。

根尾川の鮎だからこそ必要な「微調整」の技

根尾川の鮎は、きれいな水と豊かなコケに育てられた、香り高く上品な味わいが特徴です。その分、身が繊細で、焼きすぎるとすぐにパサついたり、香りが抜けてしまいがちです。だからこそ、串打ちの段階から「どう焼くか」を計算に入れておくことが欠かせません。

例えば、同じ串打ちでも、次のような点を職人は見ています。

  • 若鮎は身がやわらかいので、串を浅すぎず深すぎず通す
  • 盛夏のよく太った鮎は、脂が乗っているぶん、火の通りやすい部分と遅い部分を考えてカーブをつける
  • その日の炭の状態に合わせて、串の重心を調整する

ここで重要になってくるのが、「重心」の感覚です。焼き台に並べたとき、鮎が前に倒れたり、後ろに反りすぎたりすると、狙った位置に火が当たりません。串を通す位置や角度を少し変えるだけで、焼き台の上での立ち方が変わり、「頭にじっくり火を当てたい」「腹側を先に仕上げたい」といった細かいコントロールが可能になります。

ある真夏の日、特に立派なサイズの鮎がまとまって入ったことがありました。炭火の前に立ったベテランスタッフが、一匹ずつ串の角度を微妙に変えながら、「今日はこの子たち、ちょっと”重い”からね」と笑っていたのを思い出します。実際に焼き上がった鮎は、外はパリッと香ばしく、中は脂がじゅわっと広がる仕上がりで、その日いらっしゃったお客様からも「今日の鮎は特にうまいね」という声を多くいただきました。

根尾川は、雨の具合や水温で日々表情を変える川です。増水した後、少し濁りが残る日もあれば、驚くほど透明で、川底の石がくっきり見える日もあります。その変化は鮎のコンディションにも影響し、身の締まり方や脂の乗り具合も微妙に変わってきます。上長瀬やな 和亭では、その日の鮎の状態を見ながら、「今日はこのくらいの反り具合で」「このサイズは炭から少し遠ざけよう」と、串打ちと焼きの両方を通して調整しています。

この「微調整」の積み重ねこそが、根尾川の鮎を一番おいしい状態でお出しするための職人技だと私たちは考えています。

串打ちが変える「食べやすさ」と「おいしい一口目」

鮎の串打ちの役割は、見た目や焼き具合だけではありません。実は、「お客様がどう食べやすいか」「どこからかじりつきたくなるか」にも、大きく関わっています。

鮎の塩焼きをきれいに食べるコツとして、「頭からかじって、背骨に沿って身を外す」という方法があります。上長瀬やな 和亭では、この食べ方をしやすいように、串打ちの段階から工夫をしています。

例えば、串を通す位置を背骨のわずかに下にすることで骨に沿って身を外しやすくする、焼き上がりのときに頭が取れにくいように安定した支え方をする、尾の付け根までしっかり串を通しつつ身に余計な力がかからないようにする、などです。

あるお客様が、「自分で鮎をきれいに食べられたのは初めて」と、食後にわざわざ声をかけてくださいました。その方はいつも「川魚は骨が苦手で…」とおっしゃっていたそうですが、この日はスタッフが食べ方をお伝えしつつ、串を少し抜いた状態でお出ししました。結果として、頭から尾まで骨をきれいに外して食べきることができ、「骨がある魚って、意外と楽しいんですね」と笑顔で帰って行かれました。

また、見た目の印象も大切です。炭火台の上で、鮎がピンと反り返って並んでいる様子を見ると、多くのお客様が思わず写真を撮られます。「泳いでいるみたい」「これを見ると夏が来たって感じがする」といった声をいただくこともあり、そのたびに「串打ちのひと手間が、季節の記憶にも繋がっているんだ」と感じます。

お子さま連れのお客様からは、「子どもが、あの”くの字の魚”を見て『食べてみたい!』と言いました」というエピソードもありました。美しい焼き姿は、食欲をそそるだけでなく、鮎という魚そのものへの興味を引き出すきっかけにもなっているのです。

串打ちに込められた想いと、上長瀬やな 和亭で過ごす時間

上長瀬やな 和亭の串打ちは、単なる「準備作業」ではなく、「お客様に届ける一口目をつくる時間」だと考えています。その背景には、根尾川という川と、ここ揖斐川町で受け継がれてきた鮎文化があります。

この地域では、昔から夏になると家族で川へ出かけ、やな場で鮎を楽しむ習慣がありました。今でも、「子どもの頃、親に連れてきてもらった場所に、自分の子どもを連れてきました」と言ってくださるお客様がいます。そんなとき、「ここで食べる鮎は、ただの一食ではなく、家族の思い出の一部なんだ」と感じずにはいられません。

私たちは、串を打つときに、次のようなことを意識しています。

  • この鮎を食べるお客様が、「おいしい」と自然に声を漏らしてくれるだろうか
  • 初めて鮎を食べるお子さまが、「また食べたい」と感じてくれるだろうか
  • 久しぶりに根尾川を訪れた方が、「変わらない味だね」と安心してくれるだろうか

ある夏の終わり、シーズン中に何度も通ってくださったご夫婦が、「今年もおいしい鮎をありがとうございました。来年も同じ場所で、同じ川を見ながら食べたいです」と言って帰られました。その言葉は、今もスタッフ一同の心に残り、「来年も、その先も、胸を張って串が打てるように」という気持ちの原動力になっています。

根尾川の流れは、毎年少しずつ表情を変えながらも、確かなリズムで季節を運んできます。鮎の旬も、川の状態も、同じ年は二度とありません。だからこそ、その年、その日、その時間に合わせて一本一本串を打ち、その時だけの「おいしい鮎」を届けたいと考えています。

上長瀬やな 和亭の鮎の塩焼きをご覧になったら、ぜひ「この串は、どんなふうに打たれているのかな」と、少しだけ想像してみてください。反り返った姿、香ばしく焼けた皮、ふっくらとした身の裏側には、職人たちの技と、根尾川への感謝の気持ちがつまっています。

「鮎の串打ちに込められた職人技」を思い浮かべながら、最初の一口をかじっていただけたら、私たちにとってこれほど嬉しいことはありません。根尾川のせせらぎとともに、その一口が、皆さまの夏の記憶のひとつになりますように。



🍃**上長瀬やな 和亭(なごみてい)**🍃

2025年度の営業は終了いたしました
今年もたくさんの方にお越しいただき、誠にありがとうございました。
2026年度の営業は7月1日からとなります。来年もまたよろしくお願い致します😄


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