焼き加減で鮎の香りは大きく変わりますが、その違いは「火との距離」「時間」「塩の乗り方」で決まります。炭火を丁寧に使い分けることで、同じ鮎でもまったく別物の香りに仕上がるのです。
はじめに:根尾川の風と、一尾の鮎の香り 🌿
岐阜県揖斐川町・根尾川のほとりにある「上長瀬やな 和亭(なごみてい)」では、毎年たくさんのお客様から「ここの鮎は、香りが全然ちがうね」と嬉しいお声をいただきます。
同じ鮎、同じ塩焼きでも、「焼き加減」が少し変わるだけで、立ちのぼる香りも、口に入れた瞬間の余韻も、まるで別の料理になります。
鮎は「香魚」と書くほど、香りのよさが命の魚です。その香りを一番いい状態で引き出すのが、炭火と焼き加減のコントロールであり、魚屋一筋30年の店主として、私たちがいちばんこだわり続けている部分でもあります。
「焼き加減って、そんなに違いが出るの?」 「家庭のグリルでも、香りをもっとよくできる?」
この記事では、和亭の炭火焼きの現場で日々感じていることや、お客様との会話から生まれたエピソードをまじえながら、「焼き加減で変わる鮎の香り」の世界を、やさしく噛み砕いてお届けします。
鮎の香りの正体とは?まずは”香魚”のしくみから 🍃
そもそも、鮎の「香り」はどこから生まれているのでしょうか。
鮎は川底の石についたコケ(藻類)を主なエサにしており、その香りが鮎の身に移ることで、スイカやキュウリのような爽やかな香りがすると言われています。
- コケ(藻類)を食べる
- 根尾川の清流でよく泳ぐ
- 水質がきれいである
この3つがそろったとき、ようやく「香魚」と呼べる鮎になります。逆に言うと、どれか一つでも欠けると、香りが弱くなったり、魚特有の臭みが前に出てしまったりするのです。
根尾川は、山からの伏流水や豊かな森に支えられた清流で、水の透明度が高く、鮎にとって理想的な環境が整っています。そのため、当店に届く鮎は、焼く前からすでにほのかな香りをまとっており、「焼き加減」は、その香りを壊さずにどこまで引き立てられるか、という繊細な作業になります。
💬 お客様エピソード
ある年のこと、川魚が少し苦手だとおっしゃるお客様が、「香りが心配だけど、一度挑戦してみます」と鮎の塩焼きをご注文されました。
炭火の位置をいつも以上に慎重に調整し、皮をパリッと仕上げつつも中の水分を残すように焼き上げると、「あれ?イヤな匂いが全然しない…むしろ、いい香りですね」と、頭から尻尾まできれいに完食してくださったのを、今でもよく覚えています。
焼き加減と香りの関係:強火・中火・弱火でどう変わる?🔥
鮎の香りを語るうえで、いちばん大事なのが「火加減」です。
炭火焼きの世界では、「遠火の強火」や「近火の弱火」といった表現を使いますが、これは単に温度だけでなく、「鮎にどう火を当てたいか」を示す職人の感覚の言葉でもあります。
🔴 強火すぎるとどうなる?
強すぎる火で一気に焼くと、表面は早く色づいて香ばしい香りが立ちます。しかし、火が入りすぎると、身の水分が飛びすぎて、鮎が本来持っている爽やかな香りよりも、「焦げた香り」が前に出てしまいます。
- 香りの特徴:香ばしさが強いが、フレッシュさが減る
- 食感:身が固くなりやすく、ふんわり感が薄れる
- 余韻:炭の香りが勝ち、鮎らしさが少し遠のく
ある夏の日、炭の状態が良すぎて火力が強くなり、通常より少し火が入った鮎が焼き場であがりかけたことがあります。
焼き色だけ見ればとても美味しそうなのですが、串を持った感触で「これは身が締まりすぎている」と感じ、すぐに火から遠ざけて、別の場所でじっくりなじませました。そのひと手間で、焦げの手前で香りをとどめることができ、「炭の香りはしっかりなのに、中は柔らかいね」とお客様に喜んでいただけました。
🟡 中火〜やや弱火が生む「香りのピーク」
和亭で目指しているのは、「炭の香ばしさ」と「鮎そのものの香り」がちょうど真ん中で出会うポイントです。そのため、最初はやや強めの火で「皮目を固めて香りのフタ」を作り、そのあと遠火でじっくり火を通していきます。
- 最初:やや強火で表面を固め、脂と香りを閉じ込める
- 中盤:火から少し離して、遠赤外線で中までじっくり
- 仕上げ:香りを立たせる位置で数十秒〜1分ほど様子を見る
この「中盤」の時間が、香りを決める最大のポイントです。炭火の遠赤外線によって、鮎の中の脂がゆっくり溶け、身の中に香りが広がっていきます。ここで焦らず、焼き場の温度や炭の状態を見ながら、何度も串を返してあげることで、香りが均一に整っていきます。
🔵 弱火すぎると香りがぼやける?
「じゃあ、弱火でじっくり焼けばおいしいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、弱火すぎると、皮がだらっとしてしまい、水分も抜け切らず、香りが立たずにぼやっとした印象になります。
- 香りの特徴:立ち上りが弱く、口に入れても印象が薄い
- 食感:皮がパリッとせず、身も少しべたっと感じる
- 全体の印象:「悪くはないけれど、あと一歩物足りない」
実は、鮎の香りは「パリッ」と割れた皮からふわっと立ちのぼる瞬間に、一番よく感じられます。火が弱すぎると、その「皮のブレイク」が起こりにくく、「香魚らしさ」が半分くらいしか出てこないのです。
職人が見ている「焼き加減のサイン」:香り・音・色の三拍子 🎵
和亭の焼き場では、タイマーも温度計も使っていますが、最終的に判断材料にしているのは、「香り」「音」「色」です。
これは少し職人の世界の話に聞こえるかもしれませんが、実はご家庭でも応用できる”観察のポイント”でもあります。
① 香りの変化を嗅ぎ分ける 👃
鮎を焼き始めてしばらくすると、最初に感じるのは「生臭さが消えていく匂い」です。それが抜けてくると、次に「炭火の香り」と「鮎の脂が温まりはじめる香り」が、ふわっと混ざってきます。
- 焼き始め:生の香りが徐々に消えていく
- 中盤:炭と脂の混じった”こうばしい香り”
- 最後:皮が割れて、鮎そのものの甘い香りが強くなる
職人にとっては、この「甘い香り」がはっきりと感じられるようになったかどうかが、焼き加減の重要なサインです。「今、香りが変わったね」と焼き場の中で声をかけ合う瞬間があり、その一言をきっかけに串の位置や向きを微調整していきます。
② 「ジュッ」という焼き音の違い 👂
焼き音も、焼き加減の大事なヒントです。強火すぎると「ジュウッ!」と大きな音が続いてしまい、脂が一気に落ちてしまいますが、理想的な状態では、静かな「ジュッ、ジュッ…」というリズムに変わっていきます。
- 脂が一気に落ちて弾く音 → 火が強すぎるサイン
- 静かな、間のある音 → 中までじんわり火が入っているサイン
焼きながら耳を澄ませていると、鮎がいまどんな状態なのか、かなり細かくわかってきます。
③ 焼き色と「背中の塩」の表情 👀
見た目で一番わかりやすいのは、やはり焼き色です。透明感のあるきつね色から、少し濃いめの狐色に変わり、皮に小さなヒビが入ってきた頃が、香りのピークに近づいている目安です。
さらに、背中に残る「化粧塩」の表情も重要です。塩が白くふんわりと残っているときは、余計な水分が飛びつつ、身の中には旨みと香りが閉じ込められています。逆に、塩が完全に溶けて流れてしまっていると、少し火が入りすぎている可能性もあるため、職人はその細かな違いを見逃さないようにしています。
ご家庭でできる「香りを活かす鮎の焼き方」ガイド 🏠🔥
「お店の炭火じゃないとダメなのかな…」と心配される方も多いのですが、家庭用の魚焼きグリルやフライパンでも、ポイントを押さえれば、鮎の香りをしっかり引き出すことができます。
下処理と塩の振り方 🧂
まずは、鮎を軽く水で洗い、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります。このとき、水分が残っていると、生臭さが残ったり、焼き始めに余計な蒸気が出て香りがぼやける原因になります。
- 水洗いは手早く、やさしく
- 水気は丁寧にふき取る
- 塩は「振る位置」と「量」が大事
塩は、全体にまんべんなく振りつつ、特に「背中側」に少し厚めに振ると、焼き上がりの香りがよくなります。これは和亭の「化粧塩」の考え方にも通じるもので、見た目を美しくするだけでなく、香りと旨みを閉じ込める”フタ”の役割を果たしてくれます。
グリル焼きのポイント ⏱️
ご家庭のグリルで焼く場合は、最初から強火で攻めすぎないことが大切です。最初の2〜3分は中火〜やや強火で表面を固め、その後は少し火を弱めてじっくり焼いていきます。
- 皮が乾いて、少しハリが出てきたら火を弱める
- 全体で12〜15分前後を目安に、様子を見ながら調整
- 途中で一度だけ向きを変え、均一に火を入れる
「時間」を守るよりも、「香り」と「焼き色」をよく観察してあげることが大切です。焼きながら、「ちょっとスイカみたいな香りがしてきたな」と感じたら、それは香りが立ち始めた合図です。そこから1〜2分のうちに火を止めると、過不足のない香りに仕上がりやすくなります。
💬 お客様の”成功エピソード”
毎年シーズンが終わるころ、「家でも鮎を焼いてみたんですが、去年よりうまくできました!」と、写真付きでメールをくださるお客様がいらっしゃいます。
その方は、以前は強火で一気に焼いていたそうですが、「最初は中火、そのあと弱めに」というお話を和亭の焼き場で聞いてから、ご家庭でも火加減を意識してくださるようになりました。
「香りが前よりもやさしくなって、子どもたちも『お店のに近づいた!』と言ってくれました」とのご報告に、焼き場のスタッフも思わず笑顔になりました。家庭でも、お店でも、「香りを大事に焼く」という気持ちは同じなのだと、改めて感じた瞬間です。
和亭だからできる「根尾川 × 炭火 × 職人技」の香りづくり 🎣✨
最後に少しだけ、和亭の焼き場ならではのこだわりをお話させてください。当店の鮎は、根尾川の清流で育ったものを中心に、魚屋一筋30年の店主がその日の状態を見極めて仕入れを行っています。
その日の鮎に合わせて、焼き加減も変える 📅
鮎は同じ川でも、日によって脂の乗り方や身の締まり具合が変わります。前日までの水位や雨量、水温などによっても、香りの質が微妙に変化するため、焼き加減は「マニュアル通り」では済みません。
- 脂がよく乗っている日 → 火から少し遠い位置でじっくり
- 身が締まっている日 → 最初にしっかり火を入れて香りを立たせる
- 雨上がりで香りが繊細な日 → 焼きすぎないよう、短時間で仕上げる
秋の「落ち鮎」の時期などは、脂の量が増えるぶん香りも濃厚になりますが、その分、焦げやすさも増します。そうした変化を、香りと手応えで感じながら、一尾ずつ火との距離を変えていくのが、炭火焼きの一番やりがいのあるところです。
お客様の一言が、焼き場の教科書 📖
和亭のブログには、「鮎の香り」や「炭火焼きの科学」についての記事もたくさん掲載していますが、その多くは実際にお客様からいただいた感想や質問がきっかけになっています。
- 「どうしてここの鮎は、頭から尻尾まで食べられるの?」
- 「同じ鮎なのに、最初の一尾と二尾目で香りが違う気がする」
- 「雨の日と晴れの日で、味って変わりますか?」
こうした素朴な疑問にお答えするために、焼き場で感じていることを言葉にし、できるだけ専門用語をかみくだいてお伝えしているうちに、「香り」と「焼き加減」についても自然と語ることが増えていきました。
おわりに 🌸
「上長瀬やな 和亭」は、単に鮎を焼いてお出しする場所ではなく、根尾川の自然と、鮎という魚が持つ不思議な魅力を、香りや味を通して感じていただくための小さな舞台だと考えています。
もしご来店の際に、「焼き加減で香りって変わるんですか?」と声をかけていただければ、焼き場のスタッフはきっと嬉しそうに、炭火の前からちょっとだけ抜け出して、お話しさせていただくと思います。
皆さまのお越しを、根尾川のほとりでお待ちしております 🐟💨

🍃**上長瀬やな 和亭(なごみてい)**🍃
岐阜・根尾川の自然に囲まれた「やな」で、旬の鮎を炭火で。
魚屋一筋30年の目利きが選ぶ、極上の鮎料理をぜひご堪能ください。
📍岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲長瀬720
📞 ご予約・お問い合わせ:0585-55-2630
🕒 営業時間: 11:00~ 17:00 ラストオーダー16:30
🚗 大型駐車場完備 / PayPay対応
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