根尾川の水質が鮎の香りと味を決める。清流と鮎料理の切れない関係
「鮎が住める川は、水がきれいな証拠ですよ」と、お客様にお話しすることがあります。 ここ根尾川のほとりで鮎料理をお出ししている私たちにとって、「水質」と「鮎の味」は切っても切れない関係なのです。
鮎はなぜきれいな川にしか住めないのか
鮎は「清流の女王」とも呼ばれるほど、水質にとても敏感な魚です。
きれいな川にしか住めないと言われるのには、はっきりとした理由があります。
鮎が元気に育つために大切な水質の条件は、主に次の4つです。
- 水の透明度
- 溶存酸素量(溶けている酸素の量)
- 水温の安定
- エサとなる藻(コケ)の質
「透明度」が高いということは、濁りや汚れが少ないということです。 光が川底まで届きやすくなり、石の表面に栄養たっぷりの藻がよく育ちます。
鮎はこの藻を食べて育つため、透明な水ほど、鮎の香りと味も良くなっていきます。
「溶存酸素量」とは、水の中にどれだけ酸素が溶け込んでいるかを表す指標です。 人間にとって空気が必要なように、魚にとっては水中の酸素が生命線です。 川底に石が多く、水が岩に当たって泡立ちながら流れる根尾川は、自然と水中に酸素がたっぷり供給される構造になっています。
さらに、鮎は急激な「水温の変化」にも弱い魚です。 根尾川は山々に囲まれた谷あいを流れており、上流から冷たい水が供給されます。
両岸の木々が川面に影を落としてくれるため、真夏でも極端に水温が上がりにくく、鮎がストレスなく過ごせる環境が保たれているのです。
ある夏の日、開店前に川の様子を見に行ったとき、子ども連れのお客様が川をのぞき込みながら「お魚がはっきり見えるね!」と目を輝かせていました。 その視線の先には、川底の石と、その周りを泳ぐ鮎の姿がくっきり。 「この透明度だからこそ、鮎が元気に育つんですよ」とお話しすると、とても驚かれていたのが印象的でした。
根尾川の水質が「鮎の香り」と「身の締まり」をどう決めるか
水質が良いと鮎が住める、というだけでなく、「水質が鮎の味そのものを形作っている」と言っても大げさではありません。 特に根尾川のような清流では、水質の違いがそのまま鮎の「香り」と「身の締まり」に現れます。
鮎は別名「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれます。 スイカやキュウリのようなさわやかな香りがするのは、石に付く藻を食べることで体内にたまる成分の影響です。
この藻の質は、川の水の透明度や栄養バランスによって大きく変わります。
根尾川の水は驚くほど透き通っており、川底の石が一つひとつ見えるほどです。
この透明度の高い水の中で育つ藻は、余計な汚れが少なく、香りの良い「良質なコケ」として育ちます。 そのコケを食べた鮎は、雑味のないすっきりとした香りと、透明感のある味わいを持つようになるのです。
身の締まり具合にも、水質は深く関わっています。 清流で育った鮎は、常に流れに逆らいながら泳ぐ必要があるため、自然と筋肉が発達し、身がきゅっと締まります。
一方で、流れの緩やかな場所や、水質の良くない環境では、運動量が少なく身がだらっとしがちになります。
当店でも、仕入れの際に鮎を手に取るとき、「この身の張りは根尾川らしいね」と感じることがあります。 指でそっと押したときに、すぐにプリッと戻ってくる弾力。 これは、冷たく澄んだ水の中で、日々泳ぎ続けてきた証拠でもあります。
ある年、他の地域の鮎を試しに取り寄せて、根尾川の鮎と焼き比べたことがありました。 見た目は似ていても、香りを比べると違いは歴然。 「やっぱり水が違えば、鮎も違うな」と、スタッフみんなでうなずき合ったのを覚えています。
水質と「旬」の関係|一年魚・鮎の繊細な変化
鮎は一年で一生を終える「一年魚」です。
春に川をさかのぼり、夏にもっとも成長し、秋に産卵を終えるまで、季節ごとに味わいや香りが変化していきます。 この変化にも、水質と川の状態が大きく関わっています。
春先、雪解け水が流れ込む根尾川は、水温が低く、水もピンと張りつめたような冷たさです。
この時期に川へ戻ってくる稚鮎はまだ小さいですが、水がきれいで酸素も豊富なため、ゆっくりと着実に成長していきます。 水温が安定してくる初夏には、川底の藻もよく育ち始め、若鮎が一気に大きくなるタイミングを迎えます。
夏本番、特に水温が上がりすぎず、適度に流れがある年の根尾川は、鮎にとって理想的な環境です。 こうした年の鮎は、身の締まりと脂のノリ、香りのバランスが非常に良く、「今年は当たり年だね」と漁師さんや釣り人の方々と話題になることもあります。
一方で、雨が少なく水量が減った年や、高温が続いて水温が上がりすぎる年は、鮎にとっても負担が大きくなります。 水温が高くなりすぎると、水中の酸素量が減り、鮎が弱りやすくなるからです。 そんな年は、同じサイズでも香りの立ち方や身のコンディションが少し違ってくることもあります。
当店の店主は魚屋歴30年の経験から、鮎の状態を見て「今年は少しゆっくり育っているな」「今の時期はこのサイズが一番おいしい」といった判断を行います。
ある年には、「このところ水温が高めだから、焼きすぎないように火加減を少し弱めにしよう」と、調理の段階で調整したこともあります。 水質や水温の変化を感じながら、その年ごとの「旬の鮎」の顔を見極めるのも、根尾川と共に歩んできたお店ならではの仕事だと感じています。
根尾川の水質を守る取り組みと、当店のこだわり
根尾川の清らかな水質は、自然が与えてくれたものでもありますが、人の手による「守る努力」によって支えられている側面もあります。
そして私たち「上長瀬やな 和亭」も、その恩恵を受けて鮎料理を提供する立場として、できる限りの配慮を続けています。
根尾川筋漁業協同組合では、遊漁規則の整備や放流事業、水質や河川環境の保全に取り組みながら、川の恵みを次の世代へつなぐ活動を行っています。
釣り人の皆さんも、ゴミを持ち帰ることや釣り方のルールを守ることで、この美しい川を一緒に守ってくださっています。
当店としても、次のような点に気を配っています。
- 調理場や施設から川へ油や洗剤が流れ出ないように設備を管理
- ゴミの分別・回収を徹底し、河川敷に残さない運営
- 川の増水や異常時には、営業よりも安全と環境保全を優先した判断を行う
ある大雨の翌日、川の様子を見に行ったとき、流木や草が多く流れ着いていました。 スタッフ総出で周辺の片付けをしながら、「この場所でお店を続けさせてもらっているのは、川のおかげだね」と話したことがあります。 根尾川の水質があるからこそ、おいしい鮎が育ち、その鮎を楽しみにお客様が足を運んでくださる。 その循環を壊さないようにすることが、私たちの役割の一つだと感じています。
また、鮎の仕入れにおいても、「根尾川の清流で育った鮎」という点を大切にしています。
身の締まりや香りを一尾ずつ確かめながら、「この鮎なら自信を持ってお出しできる」と判断したものだけをお客様のテーブルに届けています。 こうした目利きと管理は、「水質の良さを生かし切るための、最後のひと仕事」と言っても良いかもしれません。
「水を味わう」感覚で楽しむ根尾川の鮎料理
ここまで、「根尾川の水質と鮎の関係」について少し専門的なお話も交えながらお伝えしてきました。 最後に、実際に当店で鮎料理を召し上がるときの、ちょっとした「味わい方のコツ」をご紹介したいと思います。
鮎の塩焼きを一口食べるとき、ぜひ意識していただきたいのは次の3つです。
- 香り:口に入れる前に、鼻からふわっと抜ける香りを感じてみる
- 身の食感:噛んだときの弾力や、ほどけ方の違いを味わってみる
- 後味:飲み込んだあとに残る、ほろ苦さやすっきり感を確かめてみる
これらはすべて、「どんな水で、どんな環境で育ったか」の答えそのものです。
根尾川の鮎は、雑味のない澄んだ後味と、すっきりとした香りが特徴で、「鮎は苦手だったけれど、ここでは完食しました」というお声をいただくことも少なくありません。
あるお客様は、初めて当店に来られたとき、「川魚は独特のにおいが苦手で…」とおっしゃっていました。 それでも「せっかく根尾川まで来たから」と、勇気を出して一尾丸ごと召し上がったところ、「あれ?全然イヤなにおいがしない」「もっと早く出会いたかった」と笑顔に。 その後、毎年のようにご家族で来てくださるようになりました。
私たちが大切にしているのは、「鮎料理を通して、根尾川の水そのものを味わっていただく」という感覚です。 川のせせらぎを聞きながら、炭火で焼き上がる鮎の香りを待ち、ひと口目をゆっくりと味わう。 その一連の体験の中に、「清らかな水が育てた一尾」の物語がぎゅっと詰まっています。
もしこの記事を読んで、「水質と鮎の関係を、自分の舌で確かめてみたい」と感じていただけたなら、ぜひ根尾川のほとりの上長瀬やな 和亭へお越しください。 透明な川の流れと、炭火で香ばしく焼き上がる鮎の一皿が、きっと「清流の味とは何か」を静かに教えてくれるはずです。

🍃**上長瀬やな 和亭(なごみてい)**🍃
岐阜・根尾川の自然に囲まれた「やな」で、旬の鮎を炭火で。
魚屋一筋30年の目利きが選ぶ、極上の鮎料理をぜひご堪能ください。
📍岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲長瀬720
📞 ご予約・お問い合わせ:0585-55-2630
🕒 営業時間: 11:00~ 17:00 ラストオーダー16:30
🚗 大型駐車場完備 / PayPay対応
📲 公式LINE・Instagramで最新情報&お得なクーポン配信中!
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