春の根尾川は、雪解け水がゆっくりと流れ込む、清らかでみずみずしい季節です。
春の根尾川は、夏のにぎやかな「やな」シーズンとはまた違う、静かで深い魅力に満ちた季節です。
水量は冬より増えますが、夏の増水期ほど激しくはなく、川面はどこか柔らかく、陽ざしを受けてキラキラと光ります。
川の両岸には、揖斐川町の山々から芽吹いた新緑が広がり、まだ観光客の少ないこの時期は、まさに「独り占めできる清流」と表現したくなる穏やかさです。
当店のある揖斐川町谷汲長瀬周辺は、谷あいを流れる根尾川と、田畑や集落がほどよい距離感で寄り添う、昔ながらの里山の風景が残るエリアです。
同じ岐阜県内でも長良川のような観光地とは違い、根尾川は「暮らしに寄り添う清流」という側面が強く、通学途中の子どもたちや、田畑に向かう地元の方々の風景の中に、さりげなく川が存在しています。
春はまだ川遊びのシーズン前ということもあり、川辺で聞こえてくるのは、鳥のさえずりや、風が木々を揺らす音、水のせせらぎが中心です。
ある年の4月、開店準備のために早朝から店に出ていたときのことです。 川霧がうっすらと立ち上り、遠くの山々はまだ淡い色合いのまま。 ふと川面を見ると、流れに揺られる小さな稚鮎の群れが、きらりと銀色に光りながら進んでいくのが見えました。
夏の最盛期には、どうしても「食材」として見ることが多い鮎ですが、この時期は「川で生きている命」としての鮎の存在を、静かに感じさせてくれます。
春の根尾川を楽しんでいただくなら、こんな過ごし方がおすすめです。
- 川沿いの道を、ゆっくり散歩しながら新芽や野の花を眺める。
- 朝や夕方の時間帯に、川霧や柔らかな光に包まれた水面を写真に収める。
- 川の音をBGMにしながら、テラス席やお車の中で一息つく。
夏の「やな」のような派手さはありませんが、川が本来持っている静かな魅力に触れられるのが、春の根尾川ならではの楽しみ方です。
「やな」が動き出す前の舞台裏と、根尾川というフィールド
「やな」とは、川を横切るように設置する木製の仕掛けで、流れてくる鮎を受け止めて捕獲する伝統的な漁法の施設のことです。 川底から斜めに板や丸太を組み上げ、流れに沿って鮎が自然に乗り上がる構造になっており、これを「やな場(やなば)」とも呼びます。 当店「上長瀬やな 和亭」は、このやな場のすぐそばにあり、鮎の漁と料理の両方を担う、ちょっと珍しい存在でもあります。
春は、そんな「やな」が動き出す前の、大切な準備の季節です。
営業期間中は無休で、鮎料理を楽しみに来てくださるお客様をお迎えするため、春のうちに設備の点検や清掃を入念に行います。
冬の間に冷え込んだ木材や金具は傷みがないか、足場は安全か、川の流れに変化はないかなど、一つひとつ確かめながら、やな場の設営計画を立てていきます。
具体的には、次のような作業を行っています。
- 川底の地形や石の配置を確認し、やなを組む位置・角度を微調整する。
- 木材の状態を点検し、必要に応じて交換・補強を行う。
- お客様が通られる通路や休憩スペースの安全確認、手すりのチェック。
- 厨房設備や給排水設備の点検、鮎を扱うための器具の準備。
根尾川は山あいを流れる川のため、雪解けの水や大雨の影響で、毎年少しずつ川底の様子や流れ方が変わります。
そのため、前年と同じ図面のまま設営するのではなく、毎年「その年の根尾川」に合わせて、やな場の構造を微調整しているのです。
ある年の春、大きな出水のあとに川の様子を見に行くと、以前はなだらかだった川底に新しい深み(瀬と瀬の間の「淵」)ができていました。 これは、鮎が休憩したり、餌を探したりする大切なポイントです。 その場所を確認したうえで、「この流れなら、やなは少し下流にずらした方が鮎が自然に入りやすいかもしれない」と、位置を数メートル単位で変えたこともありました。
こうした細かな調整を通じて、川と向き合いながら、毎年「今年のやな場」を形にしていきます。
根尾川は、上流にダムがあるものの、比較的自然の姿が残っている清流です。
山々から流れ込む冷たい水は透明度が高く、川底の石の色や、そこに育つ藻までよく見えます。
この「石に付く藻」は、鮎の主なエサであり、鮎の香りと味わいを決めるとても重要な要素です。 春の時点で、どのあたりの石にどんな藻が付き始めているかを見ることで、「今年の鮎はどんな風味に育ちそうか」という想像も膨らんでいきます。
清流の女王・鮎の一生と、プロの目から見た「春」の意味
鮎は「清流の女王」とも呼ばれる川魚で、一年で一生を終える短命な魚です。
秋に川で産卵された卵はふ化し、稚魚は川を下って海や汽水域へと向かい、春になると再び川をさかのぼってきます。
この「春に川をのぼる時期」が、根尾川にとっても、そして私たち鮎料理の専門店にとっても、とても大切なタイミングです。
当店の店主は、魚屋歴30年のプロの目利きとして、鮎の成長段階と味わいの変化を、長年見続けてきました。
春に根尾川へ戻ってくる稚鮎は、まだ小さく、身も細いですが、その分、骨が柔らかく、香りも若々しいのが特徴です。
やがて初夏になると「若鮎」と呼ばれるサイズになり、石に付いた藻をたっぷり食べて、身に旨みとほのかな苦味が乗ってきます。
そして夏本番には、程よい脂と、香ばしさが際立つ「まさに今が食べ頃」という状態に育ってくるのです。
専門用語としてよく出てくる「友釣り」は、鮎の縄張り意識を利用した漁法です。 一匹の鮎(友鮎)を針に付けて川に泳がせ、その鮎の縄張りに入ってきた別の鮎が攻撃してくる性質を利用して掛ける釣り方のことを指します。
根尾川でも、友釣りは夏の代表的な楽しみ方の一つで、地域の方はもちろん、遠方から訪れる釣り人の皆さまにも親しまれています。
春の段階では、まだ本格的な友釣り解禁前の準備期間であり、多くの釣り人が解禁情報を確認しながら、竿や仕掛けの準備を進めています。
根尾川では、地域や区間ごとに解禁日が細かく決められており、「いつからどのエリアで釣りができるか」は、漁協の案内に基づいて管理されています。
このように、春の根尾川は「鮎の一生が動き出す季節」であると同時に、「漁師さんや釣り人、そして私たち料理人が、それぞれの準備を進める季節」でもあるのです。
ある年、解禁前の根尾川を眺めながら、常連の釣り人の方とこんな会話をしました。 「今年は雪が多かったから、きっと水が冷たくて、鮎の上がりもゆっくりかもしれんね」「でも、そのぶん夏の終わりには、いいサイズに育つかもしれんな」。 そんなやりとりを交わしながら、川の様子を一緒に眺めていた時間は、鮎を「自然のサイクルの中で育つ命」として捉える感覚を、改めて教えてくれました。
春にこそ感じてほしい、和亭のこだわりと安心への取り組み
当店「上長瀬やな 和亭」は、根尾川の鮎を中心に据えた鮎料理専門店として、長年この地で皆さまをお迎えしてきました。
店名の「和亭(なごみてい)」には、「川のせせらぎの中で、心をなごませていただきたい」という思いを込めています。 魚屋としての経験を生かしながら、「一番おいしい状態の鮎を、一番おいしい調理法で」お出しすることを大切にしてきました。
営業期間中は、鮎の塩焼きや甘露煮をはじめ、コース料理や一品料理など、さまざまな鮎料理をご用意しています。
また、売店コーナーでは、鮎の加工品や、ビールにぴったりなスペアリブやチキンステーキなども取り揃え、ご家族連れやグループのお客様にも楽しんでいただけるよう工夫しています。
「鮎のつかみ取り体験」も人気で、お子さまが素手で鮎を追いかける姿に、ご家族の笑顔があふれる光景は、夏の風物詩となっています。
一方で、春は営業前の静かな時間だからこそ、当店の「見えないこだわり」を整える期間でもあります。
- 川の状況に合わせたやな場の設計・安全確認。
- 鮎の仕入れや管理方法の見直し、保冷・鮮度保持の設備点検。
- 店内の清掃や改装、座席レイアウトの調整など、快適な空間づくり。
- 調理スタッフの研修や、新メニュー・コース構成の検討。
特に鮎は鮮度によって味わいが大きく変わるため、「どのタイミングで締めるか」「どのような温度帯で管理するか」といった工程を、春のうちから改めて確認しています。
魚屋歴30年の経験に基づき、身の張りや内臓の状態、香りの違いまで細かくチェックし、その年の傾向に合わせた扱い方を考えるのも、この時期の重要な仕事です。
安心・安全の面では、設備の点検に加えて、川の増水や天候に関するリスク管理も欠かせません。 春先はまだ天候が変わりやすく、山間部では短時間の雨でも水位が変動することがあります。 そのため、気象情報や上流の状況をこまめに確認し、「どの程度の水位なら営業できるか」「避難経路は十分か」といった安全基準を、毎年スタッフ全員で共有しています。
ある年の春、強い雨の日が続いたあと、通常よりも早めに川の様子を見に行くと、岸の一部が想像以上に削られていることに気付きました。 そこはお客様の動線にもなりうる場所だったため、「念のため通路の位置を変えよう」と判断し、やな場の設営計画を変更したことがあります。 結果的に大きな災害にはつながりませんでしたが、「早めの確認と対応が、お客様の安心につながる」と実感した出来事でした。
こうした取り組みは、ブログやSNSではなかなか表には出にくい部分ですが、「根尾川の恵みを、安全に、安心して楽しんでいただくための、見えない準備」として、春の間ずっと続けています。
春の根尾川を知ることが、夏の「やな」をもっと楽しくする
「上長瀬やな 和亭」の営業期間は、主に鮎が美味しく育つ夏から秋にかけてとなりますが、その背景には「春から続く物語」があります。
春に雪解け水が流れ込み、稚鮎が川を上り、新緑が山を彩り始める。 その過程を知っていただくことは、夏に鮎料理を味わうときの、楽しみ方を一段深くしてくれると私たちは考えています。
たとえば、夏に当店で鮎の塩焼きを召し上がっていただくとき。 「この鮎は、春にはまだ小さな稚鮎で、根尾川の石に付いた藻を食べながら育ってきたんだな」と思い浮かべていただくと、一口ごとの香りや食感の感じ方が変わってくるはずです。
また、友釣りで釣り上げられた鮎なら、「縄張りを守るために立ち向かってきた、元気な一匹なんだ」という背景も重なり、よりいっそう愛着が湧いてきます。
春のうちに根尾川を訪れて、川の静けさや周囲の景色を体感していただくのも、とてもおすすめです。
- 夏のにぎやかな景色との違いを、事前に知っておける。
- ご家族やご友人との「次は鮎の季節にまた来ようね」という約束が生まれる。
- 川の音や空気感を覚えておくことで、後の来訪時に「帰ってきた」という安心感を持てる。
実際に、「春に近くまで来たので、川の様子だけ見に寄りました」というお客様もいらっしゃいます。 その方は、川沿いを少し散歩されたあと、「夏には子どもを連れて、鮎のつかみ取りをさせてあげたいです」と笑顔で話してくださいました。
その年の夏、本当にご家族で来店され、お子さまが元気いっぱいに鮎を追いかけていた姿を見て、「春の一言が、夏の思い出につながったんだな」と、とても嬉しく感じたことを覚えています。
根尾川は、季節ごとに表情を変えながら、鮎や人の暮らしを静かに支えてくれる川です。
春の静かな根尾川、夏のにぎやかなやな場、秋の少し物寂しげな川辺。 そのすべての時間に、私たち「上長瀬やな 和亭」は寄り添いながら、川の恵みを皆さまの食卓へとお届けしてまいります。
春の今だからこそ、ぜひ一度、根尾川と和亭の一年の始まりを、静かに感じにいらしてください。 そして、夏の鮎シーズンには、清流の女王・鮎の一番おいしい瞬間を、心ゆくまで味わいにお越しいただければ嬉しく思います。

🍃**上長瀬やな 和亭(なごみてい)**🍃
岐阜・根尾川の自然に囲まれた「やな」で、旬の鮎を炭火で。
魚屋一筋30年の目利きが選ぶ、極上の鮎料理をぜひご堪能ください。
📍岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲長瀬720
📞 ご予約・お問い合わせ:0585-55-2630
🕒 営業時間: 11:00~ 17:00 ラストオーダー16:30
🚗 大型駐車場完備 / PayPay対応
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