やなができる場所の秘密

やなはどこにでも作れるわけではないという話

「やな」はどこにでも作れるわけではありません。上長瀬やな 和亭の目の前、根尾川の流れに寄り添うようにやなが設けられているのは、実は”偶然”ではなく、この場所だからこそ条件がそろった結果なのです。

「川さえあれば、やなは作れるんですよね?」と聞かれることがありますが、答えは「いいえ」です。やなは、川の流れを利用して鮎を受け止める伝統漁法なので、ただ水が流れているだけでは成り立ちません。

やなが成り立つためには、ざっくり言うと次のような条件が必要になります。

  • 川の流れに”向き”と”強さ”のメリハリがあること
  • 川幅や水深が、やなを組むのにちょうど良いこと
  • 川底の地形が安定していて、土台をしっかり組めること
  • 鮎が好むコケや石があり、実際に鮎がよく通る場所であること

つまり、「やなを作るにふさわしい川」と「鮎が集まる場所」が、同じポイントで重なっている必要があるのです。これが、「やなができる場所には理由がある」と言われるゆえんです。

上長瀬やな 和亭の前に広がる根尾川も、長い時間をかけてその条件を満たしてきた川です。川幅は広すぎず狭すぎず、流れが一方向にガンガン流れているのではなく、早いところと緩やかなところが混ざり合っています。川底には大小さまざまな石があり、鮎がコケを食べながら上ったり下ったりするのにちょうどよい”川の道”が自然とできているような場所です。

ある夏の日、初めてやな場をご覧になったお客様が、「どうして、ここに作ったんですか?」と聞いてくれました。スタッフが「ここを鮎が通るんです」とお答えすると、その方はしばらく川面を眺めて、「たしかに、水の流れがここだけ違って見えますね」と感心されていました。一見何気ない川の風景の中に、やなができる場所の秘密が隠れているのだと思います。

根尾川だからできた「やなの場所」の条件とは

根尾川の流れは、山々からの清らかな水が集まり、揖斐川へと向かって少しずつ力を増しながら続いていきます。その途中にある上長瀬のあたりは、川が大きく曲がったり、高低差が緩やかになったりする区間で、「やなを組むにはちょうどいい」と昔から言われてきた場所です。

やなを作る場所選びで大切なのは、次のようなポイントです。

  • 流れがまっすぐ過ぎないこと
  • 川底が比較的固く、杭や柱をしっかり打ち込めること
  • 大雨や増水のときに、完全に壊れてしまわない地形であること
  • 両岸から作業がしやすく、安全に出入りできること

根尾川の上長瀬周辺には、川が緩やかに曲がりながらも、水の勢いがひとつに集まるような場所があります。そこにやなを設けることで、上流から流れてきた鮎が自然とやな場の前を通りやすくなり、竹や木で組んだ斜面に乗り上げてくるのです。

私たちは、毎年やなの準備をするとき、川の水量や石の位置をじっと観察します。雪解け水が多い年、雨が続いた年など、その年ごとに微妙に川の表情が違うため、「少しこっち側に寄せた方がいいかな」「去年よりも少し高めに組もうか」などと相談しながら、やなの位置や高さを調整します。

ある年、例年よりも川の水量が多いシーズンがありました。そのときは、「いつも通り」に組んでしまうと流れが強すぎる可能性があったため、やなを支える柱の位置を少し変え、斜面の角度も普段よりもなだらかにしました。お客様から見れば、例年とほとんど変わらないように見えるかもしれませんが、その裏には「今年の根尾川」と向き合った細かな工夫が隠れています。

やなを作る場所を語るとき、私たちはいつも「川に教えてもらっている」という感覚を大切にしています。人間が「ここに作りたい」と思っても、川が「ここはだめだよ」と言っているような場所では、長く続けることはできません。逆に、川が「ここならいいよ」と許してくれているような場所が、やなができる場所なのだと感じています。

「鮎が通る道」が見える人たちの知恵

やなができる場所の秘密をもう一歩踏み込んで言うと、「鮎の通り道が見えるかどうか」という視点があります。鮎は、川を上り下りしながら育つ魚で、エサとなるコケが豊富な石や、身を休めやすい流れを好みます。そのため、川の中には、目には見えない「鮎の通学路」のような道筋ができているのです。

長年根尾川で鮎漁をしてきた地元の方々は、「あそこは鮎が溜まる」「この筋はよく通る」といったことを、感覚としてよくご存じです。それは、実際に川へ入り、季節ごとの水量や水温、コケの付き具合を見てきた経験の積み重ねから生まれた”川の地図”のようなものです。

やなの位置を決めるときも、この「鮎が通る道」を無視することはできません。いくら川の形がやなに適していても、鮎があまり通らない場所では、やなとしての役割を果たせないからです。

昔、地元の漁師さんに、「どうしてこのあたりにやなを作るんですか?」と聞いたことがあります。その方は少し笑いながら、「ここはな、鮎が”当たる”場所なんや」と教えてくれました。その「当たる」という表現の中には、流れの筋、石の並び方、水の速さと深さの変化といった、言葉にしづらい条件がいくつも含まれているのだと思います。

上長瀬やな 和亭のスタッフも、シーズン前後には川辺に立って水の流れを眺めます。水面のさざなみの細かな違いや、流れがぶつかって白く泡立つ場所、ゆっくり回り込むような淀み。最初は「ただ水が流れているだけ」に見えていた景色が、年を重ねるごとに「ここは鮎が好きそうだな」と感じられるようになっていくから不思議です。

ある若いスタッフが、「最近ようやく、鮎がどこを通りそうか分かる気がしてきました」と言ってくれたことがあります。それを聞いたベテランスタッフは、「それを感じられるようになると、串打ちや焼き方も変わってくるよ」と答えていました。川の中の見えない「道筋」が見えてくると、やなの場所選びだけでなく、鮎という魚そのものとの向き合い方も変わってくるのだと思います。

やなのある風景が生み出す「安心感」と「特別な時間」

やなができる場所には、自然の条件と、人の知恵と、長い時間の積み重ねがあります。だからこそ、やなのある風景には、どこかホッとするような、懐かしさのようなものが漂っているのかもしれません。

上長瀬やな 和亭の店内からは、根尾川とやな場の様子を一望することができます。夏の陽ざしを受けてきらめく川面、流れにしっかりと腰を据えたやなの木組み、その先に広がる山々の緑。お客様の中には、席につくなり窓の外をじっと眺め、「これだけで来てよかったと思える」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

あるご年配のご夫婦は、「若いころに来たことがあってね」と話しながら、お孫さんを連れてご来店くださいました。「この川の流れも、やなの姿も、昔と変わっていない気がする」と懐かしそうに目を細め、「でも、店の中は涼しくて快適だね」と笑ってくださいました。変わらない川の風景と、少しずつ進化してきたお店の環境。その両方があることで、「安心して楽しめるやな場」になっているのだと感じます。

やながある場所には、「ちゃんと川と向き合ってきた人たちがいる」という安心感があります。自然の力を借りながら漁をし、無理をせず、時には川を休ませる決断をしてきた歴史が、その場所の”空気”ににじんでいるように思います。

私たち上長瀬やな 和亭も、その一部でありたいと考えています。「目の前のやなで獲れた鮎を、その場で焼いて食べられる」という時間は、便利になった現代だからこそ、かえって贅沢な体験かもしれません。川の音を聞きながら鮎を頬張ると、「ああ、ちゃんと自然の中で生きているんだな」という実感がわいてくる、そんな声もよく耳にします。

やなの場所から広がる、鮎料理と根尾川の魅力

やなができる場所には、自然と鮎が集まります。そして、その鮎を一番おいしい形でお客様にお届けするのが、上長瀬やな 和亭の役目です。

根尾川の鮎は、清らかな水と豊かなコケに育まれた、香り高く上品な味わいが特徴です。旬の時期には、若鮎の繊細な香りから、盛夏の力強い旨みまで、時期ごとに違った表情を見せてくれます。やなのある場所というのは、その鮎たちが通ってきた”川のストーリー”が最も濃く凝縮された場所でもあります。

当店では、やな場で獲れた鮎の塩焼き、骨までやわらかい甘露煮、鮎づくしのコース料理、お子さまでも楽しめるメニュー構成などを通して、「やなの場所だからこそ味わえる鮎の魅力」をお届けしています。窓の外に見えるやなと川の流れを眺めながら食べる一口は、ただの「魚料理」ではなく、「根尾川の季節そのもの」を味わうひと時だと感じていただけるはずです。

ある夏の夕方、食事を終えたお客様が川辺に出て、しばらく水音を聞きながら過ごされていました。戻ってこられたとき、「ここは、時間の流れ方が街と違いますね」とぽつり。その言葉を聞いて、私たちは「やなのある場所は、時間まで少しゆっくり流れるのかもしれない」と、なんだか嬉しくなりました。

やなができる場所には、自然の条件と人の技、そして川とともに生きてきた地域の歴史が詰まっています。その全部を丸ごと感じていただける場所として、上長瀬やな 和亭はこれからも根尾川のほとりで、鮎とお客様をお迎えしていきたいと思っています。

「やなができる場所の秘密って、こういうことだったんだ」と少しでも感じていただけたら、ぜひ一度、実際の根尾川とやなの風景を見にいらしてください。川の音、風の匂い、炭火の香りとともに、その”秘密”の答え合わせをしていただけたら嬉しいです。



🍃**上長瀬やな 和亭(なごみてい)**🍃

2025年度の営業は終了いたしました
今年もたくさんの方にお越しいただき、誠にありがとうございました。
2026年度の営業は7月1日からとなります。来年もまたよろしくお願い致します😄


岐阜・根尾川の自然に囲まれた「やな」で、旬の鮎を炭火で。
魚屋一筋30年の目利きが選ぶ、極上の鮎料理をぜひご堪能ください。

📍岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲長瀬720
📞 ご予約・お問い合わせ:0585-55-2630
🕒 営業時間: 11:00~ 17:00 ラストオーダー16:30
🚗 大型駐車場完備 / PayPay対応

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